Canon EOS M でもっと高画質のビデオを撮る (Magic Lantern RAW Video)

[2020.2.21 追記]
以下の情報は数年前時点の古い情報なので、最新情報は Magic Lantern Firmware Wiki をご参照ください。


最終更新日:2013.11.28

最近、Canon のミラーレス一眼 EOS M に Magic Lantern を入れて RAW Video を試しています。
EOS M x Magic Lantern についての日本語の説明が無いので書いておく事にしました。

Magic Lantern とは Canon のデジタル一眼レフカメラ用のカスタムファームウェアアドオンです。今年の春に EOS 5D3 で RAW Video が撮れる様になり、8月頃に EOS M でも行けたという報告があって個人的に注目していました。詳しくは Magic Lantern Firmware Wiki をご覧下さい。

Magic Lantern を使用する事で、通常 H.264 での撮影をしている EOS M で RAW Video の撮影が可能になります。
まだテスト中&バランスの良い設定の模索中ではありますが、それでもダイナミックレンジの広いビデオ撮影ができました。情報量の多さが面白いです。

阿佐ヶ谷の餃子屋さん「豚八戒」のあたりでテスト撮影。
録音 hermippe
撮影 EOS M / EF-M18-55mm F3.5-5.6 IS STM
録音 ZOOM H4n / AZDEN SGM100

知人の結婚式の帰り道、銀座あたりでテスト撮影。
EOS M / EF-M22mm F2 STM


以下、インストールと設定の備忘録。

【注意】Magic Lantern を使用するとメーカー保証は無効になる可能性があります。また、発熱などでカメラにダメージを与えたり、最悪の場合にはカメラが動かなくなって文鎮になる恐れがあります
【注意】自分は以下の方法でうまくインストールできましたが、同じやり方で上手くいく保証はいたしません

【心構え】カメラがフリーズすると、すぐに高温になる事があるので速やかにバッテリーを抜きましょう
【心構え】何か変だと思ったらすぐにバッテリーを抜きましょう
【心構え】書き込み速度の早い SD カードが必須です。40MB/s以上が必要ですが、ギリギリの書き込み速度だとコマ落ちが頻発するので書込み最大90MB/sの SanDisk Extreme Pro SDHCカード が推奨されています。

また、あくまでも EOS 5D3 などのハイスペックな一眼レフカメラがメインなので過度な期待はやめましょう。今の所 EOS M で比較的に安定して撮影できるのは 1280x720 24fps までです。本体が対応しているSDカードの最大書き込み速度が40MB/sあたりまでなようなので、これ以上は期待できなそうです。

日々開発が進んでいますので、詳しい説明や必要なファイルは EOS-M Shooters Guide を追いましょう。最新の情報はフォーラムで読んだり議論したりしましょう。

以下、導入手順と細かいノウハウです。Mac OS X での手順ですが、その他の環境の場合はうまいこと読み替えて下さい。気になる事などあれば Twitter でお気軽に。


インストール手順

  1. ファームウェアの確認
  2. Mac の Java Runtime Environment を 1.7 以上にしておく
  3. SD カードをフォーマット
  4. Mac に SD カードを入れてルートディレクトリに Magic Lantern をコピー
  5. SD カードを Bootable にする
  6. 本体にインストール

ファームウェアの確認

EOS M に ver 2.0.2 のファームウェアが入っている事を確認。入ってなかったら EOS M ファームウエア Version 2.0.2 をダウンロードしてアップデートしておく。


Mac の Java Runtime Environment を 1.7 以上にしておく

処理の途中で Java の 1.7 以上のバージョンが必要になるのであらかじめアップデートしておく。 OS X Lion のアップデートで入ってるのは 1.6.x なのでオラクルさんからダウンロード。


SD カードをフォーマット

EOS M 本体で物理フォーマット。


Mac に SD カードを入れてルートディレクトリに Magic Lantern をコピー

最新の EOS M 用のファイルをダウンロードしてきて解凍。

解凍された以下のファイルを SD カードのルートディレクトリにコピー。

  • autoexec.bin
  • EOSM_202.fir
  • ML/

SD カードを Bootable にする

SD カードからの起動を可能にする設定を行います。Mac の場合は macboot を使用します。
OS X Lion(10.8)の場合は SD カードの修正に root 権限が必要なため、リンク先にあるシェルスクリプト macboot.command を使って起動する必要があります。

対象の SD カードがプルダウンに表示されているのを確認して、Make DSLR-bootable にチェックを入れてから Prepare Card ボタンを押します。プルダウンに表示されない時は Max card size プルダウンを変更してください。


本体にインストール

本体に SD カードを入れて起動。モードダイヤルを静止画(スチルカメラのマーク)に合わせて MENU からファームウェアアップデートを選択。Magic Lantern のインストールが開始します。

しばらく待って、黒い画面に緑の文字でインストール完了の表示が出ればインストール完了。一度電源を切ってから再起動すると Magic Lantern が起動します。
本体が SD カードからの起動に対応した状態で Magic Lantern の入っていない SD カードを入れて起動するとフリーズ(&発熱)する事があるので、そんな時は速やかにバッテリーを抜きましょう。


Magic Lantern の設定

Magic Lantern の設定画面を呼び出すには画面を2本指でタップ。横にズラッとタブが並んでいるのでお好みで設定してください。SET ボタンだと ON/OFF のトグルになるメニューでも、画面の1本指タップでサブメニューが出るものがあります。見落としがちなのでご注意を。

また、Magic Lantern のメニューは操作せずに時間が立つと自動的に閉じるので、長時間メニューを開いておきたいときは何かしらの操作を続ける必要があります。
以下、RAW Video 撮影用の主な設定です。


Modules タブ

RAW Video 撮影のため、まずは raw_rec モジュールをオンに。再起動するとモジュールがロードされます。
その他、自分と file_man と pic_view をオンにしています。

file_man はファイルマネージャー。いらないテイクの削除用。

pic_view は file_man で撮影済みのビデオをプレビューするモジュール。モノクロではありますが、プレビューできるようになります。プレビューを途中で止めたい場合はシャッターボタンを半押し。

Overlay タブ

フォーカスピークの表示やスポットメーター、ヒストグラムなど必要なものを適宜設定。

Movie タブ

FPS override

FPS override を選択して画面をタップ。選択肢の中から 24fps を選択。最初、SET を押してもオン/オフになって 2fps しか選べなくてハマった。画面をタップしましょう。

Movie crop mode

オンに。センサーの中央 1280x720 の部分を記録するモードです(合ってる?)ダイヤルがマニュアル露出モードになっていると選択できないので注意。動画モードにしましょう。

Video Hacks

オンにして、画面タップで何フレーム毎に SD カードに書き込むかなど適宜調節。
参考に、自分はFlush rate 4framesGOP size 12framesにしています。

Raw video

オンに。画面タップで解像度などの設定項目が現れます。録画した最新のビデオのみ、この画面でプレイバック可能(モノクロ)

その他

それぞれ、お好みで設定を変更します。触るなよ、と書いてある項目もあるのでそういうのは自己責任で。


ポストプロダクション

ピンクドットを除去する

EOS M で撮影した RAW データにはオートフォーカス用の青いピクセルと赤いピクセルが残っています。これは Pink dot と呼ばれていて、PinkDotRemoveというツールで除去する必要があります。

PinkDotRemover はオリジナルから Re-wind さんという人がフォークしたバージョンが使われる事が多いみたい。
PinkDotRemover Re-wind

自分の場合はデフォルトだとうまく除去できなくて設定ファイルをフォーラムにどなたかが上げてくれていた
dot data update (temporary)
に変えたらうまく動作しました。上手くいかない場合は色々お試し下さい。
最近 maxotics さんが focuspixelfixer というのを公開しはじめたみたい(未チェック)

raw2dng

Pink dot を除去した RAW ファイルを raw2dng というツールで連番の DNG ファイルに変換します。
raw2dng
同時に mov ファイルも出力されるのでプレビューできます。

After Effects に読み込み

Camera Raw シーケンスとして読み込み。RAW の現像と同様に色々パラメタを調整できます。

DNG に変換する所から読み込みまでは Canon RAW Video Workflow – How to Edit in Mac OSX(リンク切れ) に丁寧にまとまっていますのでこちらも参考に。
自分の場合は TIF にしないで直接 After Effects に読み込んでいます。

アンインストール

モードダイヤルを静止画に合わせて MENU からファームウェアアップデートを選択。

しばらく待って、黒い画面に緑の文字でインストール完了の表示が出た後、モードダイヤルを回転させると、画面が切り替わって黒い画面&白い文字の表示になり、アンインストール完了です。一度電源を切ってから再起動すると元の EOS M に。SD カードの Bootflag も元に戻す場合は PC でフォーマットしましょう。

Magic Lantern が設定を書き換えている部分があるので注意。
例えば

  • 録音がオフになっている
  • 動画の録画サイズが存在しない設定に
  • ホワイトバランスのモードが存在しない設定に

など。
Magic Lantern をアンインストールした後の H.264 の撮影前には必ず設定を一通り確認しましょう。

これでムービーファイルに出力できるので、あとはお好きな様に Premiere に持って行ったり、 ProRes4444 なり ProRes422(HQ) なりに出力して Final Cut Pro X で使用します。

Premiere CC は最近のアップデートで Cinema DNG のネイティブでの読み込みに対応したようなので、After Effects を使わなくてもいいかもしれません。試した人いたら教えて。

H.264 での録画と比べ物にならないくらい手間はかかるけど、仕上がりは段違いに良いので、カメラぶっ壊す覚悟のある向こう見ずなアナタは是非。