閉鎖国家ピユピル 展

展示概要
期間:2019/1/31(木)〜2/17(日)15:00〜20:00
会場:阿佐谷VOID(東京都杉並区阿佐谷北1-28-8)


製作概要

デジタルで制作されたアート作品のデータをブロックチェーンに記録しトークン化し、デジタル作品のデータにオリジナルと複製の概念を作る。さらにトークンの総発行数を制限し、希少価値を生み出す。


製作意図

デジタル画像を複製すると、オリジナルとコピーは完全に同じデータになります。そのためオリジナルとコピーは等価です。またコピーデータから再び劣化のないコピーを作ることができるため、オリジナルデータに希少価値は生まれません。

絵画などの場合、オリジナルとレプリカは差が明確です。仮に絵画を物理的に完全に複製できたとしても、それは出来の良いコピーでしかありません。この「オリジナルと複製は明確に違う」という感覚をデジタル作品にも取り入れる方法はないでしょうか。

また写真や版画などの複製可能な芸術の場合、複製する総数を制限しエディションナンバーをつけ、さらに原板を破棄したことを証明し希少価値を生み出す事があります。しかしこれらの複製芸術とデジタル作品が根本的に違いがあります。アナログ作品の場合にはフィルムや原板からしか複製が作られないのに対し、デジタル作品は作品データ自体から複製が作られてしまいます。この問題を解消し、デジタル作品の発行数を制限する方法はないでしょうか。

そこでブロックチェーンを利用し、デジタル作品のオリジナルと複製に差をつけ、さらに希少価値を生みだします。
ブロックチェーンはデジタル通貨の二重支払いを防ぐために考案された仕組みです。一度使われたデジタル通貨がコピーされ再び使われてしまえば、それは通貨として成立しません。ブロックチェーンはその問題を解決し、特定のデータが二重に所有されていない事を保証します。データ自体を複製しても所有を証明できなければ、それはただのコピーでしかありません。

この性質を利用し、デジタル作品のデータにオリジナルと複製の概念を取り入れる事が可能です。また、デジタル作品の総発行数もブロックチェーン上に記録して制限することで希少価値を生み出すことができます。


トークン化手順

「閉鎖国家ピユピル」では下記の手順で画像データの記録とトークン化を行いました。


  1. チェーン上に画像データを記録する
  2. 所有権トークンを1つ発行する(総発行数1のトークン)
  3. 発行したトークンにチェーン上の画像データを紐付ける

チェーン上に記録した画像データが「オリジナルデータ」となり、作品の発行総数は「所有権トークンの総発行数」となります。所有権トークンの所有者が作品自体の所有者となり、たとえ第三者がオリジナルデータを参照して画像を表示し、画像データとして保存をしても作品を所有している事にはなりません。


希少性のあるトークン「NFT」とは?

「あなたが持っている千円札と私が持っている千円札は無条件で交換が可能だ」と言われた時に疑問を持つ人はいないはずです。この性質を「代替性がある(Fungible)」と言います。仮想通貨も通常は代替性があり、これにより通貨としての機能を持ちます。

しかしトークン毎に個別のパラメータを与え、同種のトークンであってもそれぞれの価値を変えた場合、あるトークンを他の同種のトークンで代替する事はできません。これは例えると「あなたが飼っている犬と私が飼っている犬は犬種が同じでも交換できない」という事と同じです。このように代替性がないトークンを Non-Fungible Token(以下 NFT)と呼びます。Ethereum ではスマートコントラクトを使用した ERC721 という規格に基づいた NFT が利用されていますが、現行 NEM のトークン「モザイク」には同等の機能はありません。

ERC721 規格の NFT を使用したサービスの事例として、 CryptoKitties や MyCryptoHeroes などがあります。これらのサービスではゲーム内のキャラクターやアイテムを NFT として配布および販売しています。NFT にする事で同種のキャラクターやアイテムをトークンとして作成し、レベルや能力値の違いを付加してトークン毎に別の価値を与えることが可能です。プレイヤーは第三者によらず NFT を自分自身のアドレスに保持することができるため資産価値がある事が謳われています。

しかしながらキャラクターの画像データ自体はそのファイルサイズの大きさから Ethereum チェーン上には保持されておらず、画像を表示する際には外部のファイルストレージ上の画像データを参照しています。そのため外部のファイルストレージ上のデータが失われた場合、同じ画像を表示する事は困難であり、真の意味でプレイヤーが画像を所有しているとは言い難いと言えます。

「閉鎖国家ピユピル」のトークンは画像データ自体をオンチェーンに保存しています。さらにその画像の所有権を表すトークンも同じチェーン上に作成し、所有権を証明できる限りは画像データ自体も存在する事が保証されています。


ピユピルデコーダー

ピクセルアート閲覧装置を制作。所有権トークンを保持しているアドレスを QR コードとしてスキャンすると、所有しているピクセルアートのデータをブロックチェーンから取得し表示する仕組み。


クロージングイベント

クロージングイベントでは閉鎖国家ピユピルでの取り組みについて、ブロックチェーンに親しみのないかたでも解りやすく、ざっくりとした解説をざっくりと行いました。


メディア掲載

仮想通貨 Watch - 永続化するピクセル〜ブロックチェーン上のアート作品「閉鎖国家ピユピル」に心動かされた人々
fashionsnap.com - ピクセルアートとブロックチェーンで空想の地を表現、ヘルミッペと高崎悠介によるエキシビションが阿佐ヶ谷で開催


ブログ記事

クリプトストリーム - NEMブロックチェーンで唯一無二のデジタルアートを表現した「閉鎖国家ピユピル」の裏側に迫る
nemlog - 【NEMxピクセルアート】閉鎖国家ピユピルの感動


閉鎖国家ピユピル システム

  • 作品形態 CLI ツール
  • 開発環境 Node.js / NEM ブロックチェーン
  • 使用言語 JavaScript

ピユピルトークン

  • 作品形態 電子デバイス
  • 開発環境 Arduino / NEM ブロックチェーン
  • 使用部品 ATTiny85 / 0.96″ SSD1306 i2c OLED
  • ピクセルアート hermippe

ピユピルデコーダー

  • 作品形態 ウェブアプリ
  • 開発環境 Node.js / NEM ブロックチェーン
  • 開発言語 JavaScript

ソーシャルメディアの反応